総長さんが甘やかしてくる③


そういうと、

立ち上がり輪に戻って行った。


「幻さん」


――――夕烏


「となり、いいですか」

「……ああ」


すこし間を空けて座った夕烏は、線香花火を持っていた。


「かわいくないですか?」


少しも責めないんだな、お前は。

俺のことを。


いいや。ちがう。


誰一人、

俺の身勝手な行動を責めはしないんだな。


「こんな風に、誰かと花火するの初めてで。嬉しいです。お祭りとか花火大会がある日。きまって、お留守番してたので」

「そうか」

「サトルさんが。幻さんに、謝りたいって言ってました」

「……殴ったことなら。気にしていないと伝えてくれ」

「ありがとうって」


――――!


「直接、言いたいそうです。バカな弟でも、たった一人の弟だから。味方になってやってくれてありがとうって」

「……感謝するのは、俺の方だ」

「え?」


稔は悪意を持って俺に近づいてきた。

それでもそのすべてが偽りだと、どうしても思えない。


羅刹の前でこそ悪ぶっていたアイツは。


本当の、アイツは。


「もっとはやく。救ってやりたかった」


そこまで腐った人間でもないと、心の中で、まだ信じている自分がいるなんてこと。


お前が知ったら、こんな俺のこと

カッコわりいって言うだろうか。


「だったら。仲直りしたら、いいんじゃないですか」


…………!


「ミノルさんと。絶交しないでください」

「……それは無理だ」

「どうして」

「先代の築き上げてきたものを、壊した。その元凶が稔であり俺だ」
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