総長さんが甘やかしてくる③
「いらっしゃい」
入ったのは、朝まで営業しているラーメン屋。
「塩と、とんこつ」
そういって木良がカウンターにかけ、俺も隣に座る。
「ユウちゃんって言ったよね。マスクしてて、よくわかんないけど。かわいーね?」
「……そうだな」
「デレた幻を。これから拝めるわけだ」
霞には、気づかれたが。
木良はまだ夕烏が失踪少女だとは気づいていないらしい。
「ユウ……って。ユウカちゃんとか。ユウキちゃんとか?」
ラーメン屋の店主は少し離れた場所で作業していて、俺たちの話には耳を傾けてはいない。
それでも声のボリュームを落とし、木良にだけ伝わるように囁いた。
「夕暮れのユウに、カラスで“夕烏”だ」