総長さんが甘やかしてくる③


(ムード……?)


「四人でお出かけ、絶対に楽しいと思います!」


みんな揃うだけでも、嬉しいのに。

いつも行かないような場所に出かけたり、普段しないことをするなんて最高です。


「ユウちゃんがこう言ってるんだから問題ないよー、愁。どこに行こうかな〜」


ただ、今は。

あんまり楽しいことを考えられないかもしれない。


「お前が一番楽しむつもりじゃねぇだろうな」

「そりゃあ。愁との二回目のデートだし」

「カウントすんな。一度もしてない、一度も」


愁さんと燐さんを見てると、元気がでる。

それでも――……


【二度とツラ見せんな】


サトルさんが、幻さんを、殴った。


それは、あまりにも突然の出来事で。


二人が揉めたこと、まだ信じられない。


なんで。


なんでなの?


「……顔色悪いぞ、ユウ」


愁さんに頭をポンと置かれ、ハッとする。


「あー、愁。そんなことしてたら幻に手首落とされるよ」

「こえーわ」


なにも説明してくれなかった幻さんに、こっちから事情を聞いていいのか、わからない。


「なんでも話せよ、ユウ」


――!


「そうそう。お仕事の愚痴とかでも聞くし〜」

「そ、そんな。愚痴なんてありません。本当に、よくしてもらってます」

「じゃあなにー?」
< 29 / 272 >

この作品をシェア

pagetop