総長さんが甘やかしてくる③


黙っていた愁さんが、口を開く。


「俺は、燐の話はぶっとんでると思う。……だが。可能性がない話でも、ないと思う」

「……はい」

「こんな言い方するのはおかしな話だが、その、宗吾って男が君に乱暴しなかったことを心からよかったと思う。ここでいう乱暴というのは、つまり、一生トラウマに残るような……肉体的なものだ」


愁さんが、言葉を選びながら気持ちを伝えてくれている。

そこに優しさを感じずにはいられない。


「もちろん、乱暴しないのが当たり前で。だったら言葉の暴力を許すのかと言われれば、そういうわけじゃない。俺はユウのこと、悲劇のヒロインなんて思わない。それでも、宗吾は腐りきっていないのかもしれない」

「…………」


これは、すべて、もしもの話で。

正解なんてない。


宗吾さんの気持ちは宗吾さんにしかわからない。


なにが真実なのだろう。

わたしは、なにを、見てきたのだろう。


「とりあえず今日は、もう風呂入ってゆっくりしてろ。飯の準備も片付けも俺たちでやるから」

「でも……」

「いつもユウがやる必要ない」

「そうだよ。ボクも、花嫁修業したいしね〜」


チラッと視線を愁さんに向ける燐さん。

それを察したのか燐さんを見ようとしない愁さん。


「ごめんねー。ユウちゃん。ボクのこと嫌いになった?」

「いえ。ハッキリ言われたほうが嬉しいので。思ってること聞かせてくれて、ありがとうございます」

「強くなったね。ユウちゃん」


幻さんの、

『なるようになるだろ』という言葉を思い出す。


「宗吾さんとも。ちゃんと、向き合ってみたくなりました」

「さすが、黒梦の姫。幻の女だ」

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