総長さんが甘やかしてくる③
湯船につかりながら、思い出すのは
蛇のような目で睨んできた宗吾さんの顔ではなく
――雨に濡れた幻さんの横顔だった。
口元から血が流れていた。
「どこが青い血、ですか」
真っ赤な鮮血。
喧嘩、強いんですよね。
どうして抵抗せずに
サトルさんのパンチ受けたんですか。
『心配いらない。あのひとが本気で俺を殴っていたなら、この程度の傷じゃすまない。夕烏のことなら変わらず面倒みてくれるさ。憎まれているのは俺だけだ。なるべく顔を合わさないようにする。逃げも隠れもしないと、そう意思表示がしたかった』
なんでって、聞けなかった。
サトルさんはどうして幻さんを憎むの?
幻さんが、なにかを抱えていることが辛い。
【さすが、黒梦の姫。幻の女だ】
ねえ、燐さん。
わたし、幻さんの彼女なのに。
幻さんのこと、全然わかってあげられていないよ。