総長さんが甘やかしてくる③


こんな未来を想像したくはないが


仮に幻とユウが違う道を進むことになったとして、俺はユウとの関係を変えようと試みるか?


そりゃあユウに幻以外の恋人が現れでもすりゃ、俺の心は大きく揺れる。


だけど、手に入れようと

……俺だけのモノにしようと思うだろうか。


「ユウちゃんが、妹?」

「ああ」

「ふーん」

「あんまり信じてねえな?」

「だってさ。好きが漏れてるもん。ユウちゃん見ながら相変わらず鼻のした伸ばしっぱなしだし」

「伸ばしてねーよ」


可愛いとか。好きとか。


そりゃあ一緒にいれば、いくらでも考えざるを得ないが。


「幾らかふっきれたな」

「ほんとかな」

「誰かさんが。俺の手を煩わせやがるから」

「へえ。だあれ?」


俺の胸に顔を埋めていた燐が、のぞき込んでくる。


「……自覚しながら聞くなよ」

「抱きしめ返してはくれないの」

「するか」

「ぎゅーって。して欲しいな」

「離れろ」

「離れなーい」


ここで妥協して抱きしめ返したら

俺のこと案外くだらないやつだって思われちまうような気がした。 


それはそれで……つまんねぇな。


こいつが俺から離れていったら

俺の人生すげー退屈になるだろう。


燐のこと

縛りたくないのに繋いでおきたい。


(……はあ)


無理だ、俺には向いてない。

駆け引きなんて。


「十秒だけな」

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