総長さんが甘やかしてくる③
俺から離れようとする燐の背中に手を回した。
「へ?」
「気の抜けた声だしてんじゃねえよ」
(やっぱり小せえな)
肩幅も狭ければ、腰回りも細い。
「なあ。このところは、しっかり食ってんだろ? それでも体重増えねーってことは、体質なのか」
返事がない。
ま、まさか。
俺の行動にドン引きしてんじゃねーだろうな。
「十秒経過」
燐の身体を引き離した、そのとき。
燐の顔が赤くなっていた。
「いや。そんな照れんなって」
「……なんで」
「お前が頼んできたから」
「いいの?」
「いいもなにも。リクエストに答えてみた」
「これ以上。愁の、こと」
言葉を呑み込み、怒ったような表情を浮かべる燐。
途中で言うのやめんなよ。
言われても困りそうだが。
(あー……、クソかわいい)
「次はボクがキミをあっと驚かせるから。覚えててよ?」
「へいへい」
「勝ち逃げされた気分」
ムキになる燐を見て感じた。
この勝負に、終わりなんてなければいいのに。