総長さんが甘やかしてくる③
夜ご飯の愁さんお手製のピラフは、これまで食べたどのピラフよりも美味しくて。
隠し味はなんですかと聞いたら
『そんなもんねーな。味付けは、だしとスープを合わせてみたが』と言われた。
なるほど。
合わせるって概念がなかった。
愁さんの料理の腕は、本人の自覚なしに進化していそうな気がする。
食事のあと一足先に部屋で休むように言われたけど、一緒にキッチンで片付けをした。
「少しくらい気を抜こうと思わないのか?」
「こっちのほうが、性に合ってます」
動いていると、少し、気が紛れる。
片付けが終わってからも、一人になりたくなくて、燐さんが座っているソファの向かい側のソファにかけた。
愁さんは部屋に戻って行った。
勉強するのだろう。
向うつ伏せで寝転びながらノートパソコンをいじっている燐さん。
さっきも驚いたが、手元を一切見てないのがすごい。
どこになんのキーがあるか感覚で覚えているんだねきっと。
「なにしてるか気になる?」
「あっ……はい」
邪魔しちゃったかなと思いながらも
「すごい速さで打ってますが。文字を書いてるんですか?」
疑問を投げかける。
「プログラムの勉強」
「プログラム……」
授業で、少しだけやったことがある。
「コンピュータが理解できる言葉みたいなもの。打ち込めば、その通りに動いてくれる。便利だよねぇ」