総長さんが甘やかしてくる③
きっと燐さんは、愁さんのことを
“苦労なしのお坊っちゃん”なんてもう思ってなくて。
愁さんが努力していることも
苦労していることも、理解できているのだろうなと。
だからこそ、自分に厳しい。
このくらいの努力まだまだって思うわけですよね?
「で。なにがあったの」
「え……」
「宗吾の他に悩みがあるんでしょ」
燐さんの言葉に心臓が大きく波打った。
「むしろそっちのせいで落ち着かないんだよね。なにか用事していなきゃ心を保てないのも、ボクのいるリビングにいたいのもそのせいかな」
「……はい」
「まずは今日のドライブデートの話から聞こうか。ねえ、ユウちゃん」
「…………」
愁さんも、燐さんも。
二人とも心配してくれているのに、なにから説明していいかわからない。
「幻のこと?」
どうしてわかってしまうんだろう。
「幻さんは……サトルさんのこと、知っていたのでしょうか」
「知ってたかもね」
「そうですか」
「まあ、有名人だからね。サトルは」
(……有名人?)
「サトルがどうしたの」
「殴って、ました」
燐さんから笑顔が消える。
「嘘でしょ。幻のやつ、ユウちゃんの上司に手を出したっていうの?」
わたしは頭を横に振る。
「それじゃ、幻が殴られた……ってこと?」
「はい」