総長さんが甘やかしてくる③
「うん。それは、嬉しいね」
「だから。そんなサトルさんが怒ったのは。短気とかじゃなくて……やっぱり理由があるのだと思います」
暴力は、受け入れられない。
大切な人を大切な人が傷つけたのが辛い。
「ユウちゃん」
呼ばれて顔をあげると
燐さんが、綺麗な顔で微笑んでいた。
この子は、年下なのに
ときどきお姉さんみたいに見えるときがある。
「サトルの人となりは、よーくわかったからさ。なんか身の上話とかない?」
「身の上話……」
「雑談してて。アイツのハナシ、出たりしないの?」
「そういえば彼女さんがいるみたいなこと言ってました。それも付き合いたてとかよりは落ち着いてそうな……?」
わたしの恋バナを聞いて、若いと言っていたっけ。
「奥さんのことじゃないかな」
「え!?」
「既婚者だよ、サトルは。学生時代からの付き合いなんだってさ」
「知らなかった……! 指輪、してませんし」
「まあ外すんじゃないかな。調理するわけだし」
「そう、ですよね」
それならそうと教えてくれてもいいのに。
「秘密主義なんですかね」
「それくらいなら聞かれたら答えるかもね。自分から話さないだけで」