総長さんが甘やかしてくる③
「どうした。そんなに慌てて」
「……愁さん」
「電話してたのか? 声が聞こえたが」
「…………」
「また顔色悪くなってるぞ、ユウ」
シャワーから戻ってきた幻さんは
女の子と、部屋にいるの……?
二股って……?
「……ちがう」
幻さんが、そんなことするわけない。
でも。
あのヘルメットをもらうとき
値札が、なくて。
いずれ買い取るつもりだって言っていた。
今、一緒にいる子に
プレゼントしたかったものなの……?
「とりあえず部屋戻らないか」
もしも。
「横になった方が――」
「幻さんが、わたしのことを好きじゃなくなったら」
それは、考えたことのない未来。
幻さんを失うという未来。
「ここには、いられなくなるんですよね。みんなと、お別れして。家に、帰るしか……」
声が震えてしまうのは
帰るのが、怖いからじゃない。
幻さんに
『いらない』って言われるのが、怖い。
「なに言ってんだ。幻がユウのこと見放すわけないだろ」
強くなりたいのに。
強くなきゃいけないのに。
「なにを信じればいいか、わかりません」