総長さんが甘やかしてくる③
サトルさんが、幻さんを殴った。
宗吾さんが、わたしを必要としてくれているかもしれない。
女の子から、電話がかかってきた。
「もう。ぐちゃぐちゃです」
「俺の部屋、来ないか」
「え……?」
「来い。ちょっと見せたいものもあるしな」
(見せたいもの?)
「でも……愁さん」
勉強中ですよね。邪魔、しちゃいますよね。
「忙しいのに」
「ユウのためならいくら時間を割いてもいい」
「……っ」
辛い想いをしてきたことなら数えきれない。
たいてい一人ぼっちで乗り越えてきた。
だけど今は違う。
「君はもっと、甘えていいんだ」
こんなに優しい言葉をかけてくれた人のことを
わたしは一生忘れることはできないだろう。
「ダメなんです。弱音吐いちゃ。わたし、もっと強くならなきゃ――」
「ユウ」
正面から、抱きしめられる。
「ここにいればいい」
「……愁さん」
「たとえ何もかもなくしても。俺がいる」
胸がいっぱいになって。
だけど言葉が出てこなくて。
愁さんを、ギュッと抱きしめ返す。
「燐だってそうさ」
「燐さん?」
「捻くれてやがるが、君のこと見捨てやしない」
「はい」
「それに。幻も、絶対に君を必要としている」
「……!」
「幻を信じろ、ユウ」