総長さんが甘やかしてくる③
自室に向かいながら思い出すのはもちろん、
『……兄さん。なんでここに』
――夕烏だ。
探したよ、夕烏。
やっと見つけた。
テレビで流れる映像などではなく。
紛れもなくホンモノの夕烏に会えた。
俺の、夕烏に。
【おばさんの指示ですか】
あの女の?
そんなわけあるか。
あの女はメディアからの取材で
『一刻もはやく夕烏に会いたい』
などと、ほざいているが。
あんなのは、まったくの嘘だ。
夕烏に消えてくれと思っていやがる。
このまま失踪し続けるより、事件にでも巻き込まれ夕烏が遺体で発見された方が、あの女は喜ぶだろう。
なにせ家も金も自分のものにしたいんだからな。
お前が家出したと世間に知られたら
お前は、無事ではいられない。
元々狂っているあの女が、キレて、何をしでかすかわからない。
だから、俺が。
俺の力で。
お前を、探し出したんだ。
あの女に見つかる前に。
先に見つけてやったんだ。
なあ、夕烏。
お前は知らないだろう。
鳥籠の中に、いるお前を。
俺がどれだけ羽ばたかせてやりたいかを。