総長さんが甘やかしてくる③
カーペットの上に座っていると、愁さんがベッドの下の収納ボックスからなにか取り出した。
「これらは、俺が一年のときに使った教科書や授業の板書をとったノートだ」
まるきり同じものというわけではないが、パラパラとめくると、高校の授業で習ったような内容が載っている。
「学校も違えば二年離れてると内容の変わってるとこもあるだろうが。使い物にならないってこともねーかなと」
愁さんのノートは、とても綺麗な字で書かれていて読みやすく、要点がひと目でわかった。
ところが教科書には書き込みがなく新品同様だ。
「家出してまで勉強させるなって思ったか?」
「とんでもない……!」
「君の将来に必要がないなら受け取ることない。ただ、もう少し勉強してみたかったという気持ちがあるなら。好きに使ってくれ」
「あ……。見せたいものって」
「これだ」
わたしが学校を辞める気でいるから。
高校生活を続けられなくなったから。
だから、こんなこと言ってくれてるんですね。
「愁さん、読み返したりは……?」
「もう頭に入ってる。それに復習でなく応用を解く段階だしな」
「では。ありがたく、お借りします」
「やるよ。もう捨てようと思っていたものだが、残しておいてよかったな」