総長さんが甘やかしてくる③
「勉強、します。やれる範囲で。まだまだ学べること、たくさんあると思いますし」
「一人じゃわかんねーとこあったら教えるよ」
「いえ、そんなことまで頼めません!」
「俺が教えてやりたいと言ったら?」
「……優しすぎます」
やっぱり愁さんみたいなお兄ちゃんが欲しかった。
もし宗吾さんと勉強しても、そんな風に言ってくれないだろう。
それとも、宗吾さんは
おばさんの目がなければ、呆れながらもわたしに勉強を教えてくれますか……?
『こんな問題も解けないのか。ここはなあ、こうやって――』
ありもしない宗吾さんとの勉強会を想像をした。そんな時間があったならどれだけ嬉しいだろうか。
「ああ、でも解けるからと言って教えるのが上手いとは限らないな。家庭教師代わりにならなかったらすまない」
「愁さんって、ほんと……」
「ん?」
「素敵、ですよね」
ワンテンポ遅れて「え?」と返事が返ってきた。
「こんな人に甘やかされて、わたし、どれだけ幸せ者なんだろうって考えちゃいました」
「なんだろーな。その。絶妙に俺の心をくすぐる台詞……」
「……!?」
「なにがあったか話してくれるか。電話の相手は幻なんだろう?」
愁さんの問いかけに、頭を横に振る。
「ちがうのか」
「……ううん。幻さんの番号だったんです。でも」