総長さんが甘やかしてくる③
愁さんが、わたしの言葉を待ってくれている。
「かけてきたの、女の子で」
「……女子?」
「いま一緒にいるみたいです」
「みたいです……って。職場の人間か。あるいは知り合い……幻は、なんて言ってたんだ」
「幻さんは、傍にいなかったです」
愁さんが、なにか言いかけて口をつぐむ。
「それだけでは、どういう状況か把握しきれないが。そんなに落ち込むことは――」
「別れてあげてと言われました」
愁さんの顔色が変わる。
「自分のことが忘れられないからって」
「一体誰だ。そいつは」
「わかりません。わかりませんが。……それでもわたしは幻さんを信じたいと思います」