総長さんが甘やかしてくる③


背を向けた俺に背後から抱きついてきた霞。

俺の貸してやったシャツを一枚だけ羽織っている。


「行かないで、幻」

「離せ」

「あっためて、幻」


霞の手がシャツの中に入ってくる。


「それで満足するのか」

「え?」

「一度抱いてやれば帰るか?」


振り返り見下ろすと、目を見開く霞がいた。


「俺が霞の期待に応えられることはない」

「もっと……さ。再会の余韻とか。感動とか。浸ってくれてもいいじゃん」

「目的を聞かせてもらおうか」

「なにもしないでいて欲しい。それだけだよ」

「なに?」

「幻」


首の後ろに手が回される。


「あのときできなかったこと。しよう」

< 83 / 272 >

この作品をシェア

pagetop