総長さんが甘やかしてくる③
背を向けた俺に背後から抱きついてきた霞。
俺の貸してやったシャツを一枚だけ羽織っている。
「行かないで、幻」
「離せ」
「あっためて、幻」
霞の手がシャツの中に入ってくる。
「それで満足するのか」
「え?」
「一度抱いてやれば帰るか?」
振り返り見下ろすと、目を見開く霞がいた。
「俺が霞の期待に応えられることはない」
「もっと……さ。再会の余韻とか。感動とか。浸ってくれてもいいじゃん」
「目的を聞かせてもらおうか」
「なにもしないでいて欲しい。それだけだよ」
「なに?」
「幻」
首の後ろに手が回される。
「あのときできなかったこと。しよう」