総長さんが甘やかしてくる③


――…!


「警察に言っちゃうよ。家出少女の居場所、突き止めたって」

「やめろ」


そんなことをすれば、今すぐに夕烏を手放さなければいけなくなる。


「動揺しちゃって。そんな可愛いとこあるんだね」

「黙っていてくれ」

「こんなにあっさり黒梦の総長さんの弱み握れちゃうなんてなあ」

「……携帯を見たのか」

「幻も落ちたよね。女にうつつ抜かすなんて――」


得意げに話す霞の唇を、


「……ん」

「黙ってろ。いいな?」


俺は、右手で塞いだ。


「夕烏を遠ざけるような真似されたら、俺はお前に、なにをするかわからない」


そして、お前に

“こんな真似”をさせている、かつての仲間にも。


「んん……!」涙目で悶える霞を見て、我に返る。


霞の口元から手をどけるとゴホゴホと蒸せた。


「ひどいよ、幻。女の子にこんなことする人じゃ、なかったのに……」

「離れたくないんだ」


夕烏から、離れたくない。

夕烏を、失いたくない。


――夕烏を幸せにするのは、俺だ。


「そんなに惚れてんだね。姫に」

「ああ」
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