総長さんが甘やかしてくる③
霞が落ち着かない様子で掛け時計に目を配らせる。
「あのさ、幻。あたし、なんとしても今夜は幻のこと引き止めておかなきゃいけなくて」
「木良の指示か」
「うん。……あたし、帰るから。せめて幻が家にいてくれると助かるんだよね」
「断ったら?」
「えー、やだ。そんなこと言う?……幻を敵にまわしたくないな」
「俺に“なにもしないで欲しい”ということは。今夜、どこかでなにかを仕掛けるということだろ?」
「お願い。きっと木良は幻や仲間には危害は加えるつもりないよ。だから今夜はゆっくりしててくれればいいの」
「おやすみ。霞」
「え?」
俺は霞を気絶させるとベッドに横たわらせた。
――木良を追わないわけにはいかない。
木良の“暴走”を止められるやつがいるとすれば、それは俺で。
木良がそうなってしまった原因も。
おそらくは、俺だ。