総長さんが甘やかしてくる③


霞が落ち着かない様子で掛け時計に目を配らせる。


「あのさ、幻。あたし、なんとしても今夜は幻のこと引き止めておかなきゃいけなくて」

「木良の指示か」

「うん。……あたし、帰るから。せめて幻が家にいてくれると助かるんだよね」

「断ったら?」

「えー、やだ。そんなこと言う?……幻を敵にまわしたくないな」

「俺に“なにもしないで欲しい”ということは。今夜、どこかでなにかを仕掛けるということだろ?」

「お願い。きっと木良は幻や仲間には危害は加えるつもりないよ。だから今夜はゆっくりしててくれればいいの」

「おやすみ。霞」

「え?」


俺は霞を気絶させるとベッドに横たわらせた。


――木良を追わないわけにはいかない。


木良の“暴走”を止められるやつがいるとすれば、それは俺で。

木良がそうなってしまった原因も。


おそらくは、俺だ。

< 90 / 272 >

この作品をシェア

pagetop