総長さんが甘やかしてくる③


「幻。シャツに血、ついてるんだけど」


(……ああ。さっきすれ違った男のか)


「またやったの? 君は、色の濃い服を着てた方がいいね」


黒梦の総長になる前の俺は

当時の総長の右腕と呼ばれていた。


そんな俺と同じように、総長の傍にいた男。


それが


「僕が着てるみたいな。真っ黒なのを、さ」


木良だった。


赤い髪に黒いシャツ。


アニメキャラみたいなヴィジュアルしてやがる木良は喧嘩なんて縁遠い、学校では、たいてい寝ているようなやつだった。


昼間たっぷり睡眠をとる木良は

夜に黒梦に顔を出すときは、気だるげには違いないが、なにかと冴えていた。


無気力。それでも頭が切れる。

アイツは黒梦のいわゆる脳〈ブレイン〉で――。


「木良の睨んだとおりだ。乗り込まれる前にやれてよかった」


奇襲をあらかじめ防ぎ。

逆に相手をぶっ潰すような計画さえ立てた。


自身は手を汚さずに。


周りの人間を使って他人の人生を変えちまうような、そんな男だ。

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