総長さんが甘やかしてくる③


中学を卒業したあと


「共学って楽しい?」


木良は、男子校に進学した。


「別に」

「えー、でも。女の子がそのへんにいるんだろ?」

「……それがどうした」

「授業中、ひとけのない図書室とか。保健室のベッドとか。放課後の教室って、なーんかいいよね」


木良は俺を恐れなかった。


「僕は女の子と遊ぼうと思ったら学校の外に出るしかないけど。君は、日常から関わってるわけだろ。羨ましいなぁ」


そんなことを言いながら木良は女に少しも困ってはいなかった。


道を歩けば手を振られ、振り返し、心の中では面倒だと思いながらも愛想をふりまいていて。


「あー。今、お楽しみ中。幻も混ざる?」


黒梦のたまり場の一つである倉庫(俺は滅多に出向かないが)に自分のファンを連れ込むこともあった。


木良のマイペースさは、今思えば、燐のそれに匹敵する。

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