祈り
暗い公園に戻ってくる。
バイオリンがベンチに置いてあった。
「これ取られてたら、お前弁償だったからな。分かってる?」
「へっ!?何で……」
「置きっぱで行く事になったの、お前の所為だって言ってんだよ!!」
ちょっとイラついてる。
少し怖かった。
でも、手が触れてて
胸はドキドキしてた。
「……ごめんなさい」
「名前は?」
「え?」
「名前だよ!!」
何て自己中心的な人……。
驚いて口をぽかんと開ける。
彼がまたイラついてたから、
急いで私は持っていた携帯を取り出して
自分のプロフィールを見せた。
「人形じゃねーんだから、話せよ、自分でさぁ……。名前は口で言うもんだ」
「……すいません」
「まあ良いや。俺は高城」
「タカギさん……」
自分の頭の中で
何度も何度も繰り返す。
覚えたいと思える人。
きついけど、本当は優しい人。
藤川と一緒だ……。
藤川はきつくないけどね?
「ああ……やっぱ一哉で良いよ」
「一哉さん?」
「苗字さん付けだと、何かムカつく」
「ムカッ……!?」
月明かりに照らされた一哉さんは
やっぱり綺麗だったけど。
でも、気付いてはいなかった。
彼が、どういう人で、
どうして駆け付けて来たのか。
それに深い理由も感じず、
私は少し嬉しく思いながら
家に戻っていった。