祈り











「美喜ー。あんた、学校は?」
「今日は休みだよ、お姉ちゃん」

茶メッシュを入れたおねえちゃんは
前の私と瓜二つ。
いや、私が憧れていた存在。

今見ると、どうもしっくり来ない。
私あんな恰好してたんだなんて
ちょっと恥ずかしくなる。

前から見れば、ずいぶん大人しいし
それに服だって上品ってやつになった。
進歩なのか分からないけど
高城さんに会う恰好としては丁度良いかな?

「あ、そ。何よデート?服散らかして出掛けるなんて、いつぶりよ、あんた。しっかも何?だっさーい」
「い、良いんです、これで」
「変わっちゃって、可愛くなーい」

お姉ちゃんはぷいとそっぽを向いた。
激しく開いた胸元からネックレス。
十字架のネックレスだった。

「……?どうしたの、それ」
「はぁ?」
「そのネックレス。持ってなかったじゃん、そんなの!何か落ち着いて見えるねー。意外」

お姉ちゃんはムッとした顔になると
それを外して私の前に座る。
きらりと光るネックレスは
本物のシルバーみたいだった。

「彼氏から貰ったの!お金持ちで優しい彼氏ですぅ?あんたと違って?もてちゃうからさ~?困っちゃうよね~」
「何それ嫌味~?」











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