祈り












“キィッ……!”

錆び付いた扉を開ける。
朝日が身体に焼き付いた。
朝霧が肌を濡らす。

「あ…………」
「?」

声がしたほうこうを向くと
そこには藤森が立っていた。

「おはよっす」
「おはよう……」

この前の事もあって
私は気まずい顔をした。
失礼なのは分かってたけど
どうしてもその眉を上げられなかった。

「何処か行くの?」
「あー、うん。友達のうち」
「そっか……」

藤森は頬を掻くと、そのまま私の横に来た。
口はへの字に曲がっていた。
機嫌が悪いのかと思ってまごつく。

「ふ、藤森?」
「送るよ。一人じゃあれだろ?」
「へ、平気だよ!」

私は持っていたバックを握り締める。
何故か腕が震えていた。

「…………」
「遅らせて。暇なんだ」

藤森の顔は光がまぶしくて見えなかった。
けど、優しく笑ってる気がした。

「……うん」

この時は少し
自分がわからなかった。











< 44 / 50 >

この作品をシェア

pagetop