祈り










「大丈夫、美喜りん」

センスのない地味なあだ名に返事をする。

「え?全然平気~!!」
「本当ぉ?気にする事ないからぁ~」

話し方に寒気がする。
親切なのは良いけど、かぶれ過ぎた。
どうしても気味が悪いと思ってしまう。

「……だよねっ!!」

でも、怖い。
この人たちにも見捨てられたら……?
私はどうなってしまうのか、
そんなのは、あの事件以来よく分かった。

「…………」
「美喜りん」
「ん?何?」
「今日、皆でカラオケ行こうかって話」

もし、この面子で誰かと会ったら……?

“うわ、やっぱ地味~”
“キモ”

そんなふうに言われるのかな?
でも、それで断っても見捨てられる?

怖いから、頷く。
怖いから、断る。
私は弱くなってしまった。

あの高台に、また戻りたい。
そう願う自分がいる。








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