あなたに恋のお届けものです
「あの!」
私はその先輩の前まで行って、声をかけた。

「どうしたの?」
「…ちょっと来ていただけませんか。」


……………
「で、どうしたの?」
うっ、…もしかしたら違うかも知れないけど。でも…。

「これ…ご存知ですか?…いや、ご存知ですよね。」

私が見せたのは、あの紙。

「こんなの知らないけど…?」

ああ…。知らないか…。でも、私は諦めなかった。

「いや。知ってるはずです。だって…これ、先輩が書いたんですから。」
「は…?」

「さっき、私は顧問の先生から、部長に言っておくようにと言われて。でも、私は誰が部長か知らなかったんです。あなたが部長なんて知らなかったから。
でも…、あなたは助けてくれた。顧問の先生に不審に思われないように。
普通だったら助けようなんかしない。だって他の人は私がこの世界の人じゃないことを知らないから。」

息を一旦吸う。

「助けてくれるとしたら…それは、私がこの世界の人じゃないことを知ってる人。つまり、あの紙を書いた人…。

あなたが書いたんですよね?」

もはや、先輩に対する敬語は使っていなかった。…ヤバい。勢いにのって言っちゃったけど、もし違ったらそうとうやばくない?
「…一つ訂正。」
先輩が私を見ていた。

「確かに僕は紙を書いた。…でも、別に君を助けたわけじゃない。君が元の世界に帰れなかろうが…どうでもいい。
助けたんじゃなくて言うなれば、チュートリアルだ。」

< 9 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop