溺愛彼氏
「お気に入りです」
ファミレスを出てすぐ、もみじくんと他愛もない会話をしていれば横でカシャリと、音が鳴った。
スマホをこちらに向けている。ということは嫌な予感しかしない。
「もみじくん、いま、撮りました?」
「撮ってません」
「じゃあ見せてください」
「それは、無理です」
手を差し出せばするりとスマホを隠すもみじくん。
絶対、絶対、確信犯だ。
もみじくんの家に着きリビングで紅茶を飲む。ローテーブルの上でスマホを用意した。重大任務。先ほどの仕返しをしなければならない。
リビングの扉が開き部屋着に着替えたもみじくんが姿を現わす。
絶好のシャッターチャンスにローテーブルの上のスマホにするりと手を伸ばし、カシャリ。
「あんず、いま撮りました?」
「撮りました」
「盗撮は犯罪です」
「撮られていることを撮られた側が知っているので、盗撮ではありません」
「いいよ、僕もあんずの写真撮ったし」
「やっぱり撮ったんですね」
さらりと白状され、あれなんて思って。いま撮ったもみじくんの写真を見る。
不意に撮ったのにかっこいいのが、むかつくな。イケメンは羨ましい。
「あんずいいこと思いつきました」
「なんでしょうか?」
「いま撮った僕の写真、僕に送ってください。僕が撮ったあんずの写真もあんずに送ります」
言われるがまま、もみじくんにもみじくんを送る。
と、「この写真は僕のお気に入りです」となんとも恥ずかしい言葉と共に私の写真がら送られてきた。