溺愛彼氏
「可愛すぎます」
ぱちりと目を覚ませば隣にはもみじくんの綺麗なお顔が。枕元に置いていたスマホへと手を伸ばし、時間を確認すると8時過ぎ。
お休みだから少し寝すぎてしまった……。
じっと、まだ隣ですやすやと眠るもみじくんを見つめる。
無防備で小動物みたいでなんだかとっても可愛らしい。
スマホの上で指を滑らせた。
「おはよう」
眠るもみじくんにひと言残し、綺麗に片付けられたキッチンへと向かった。彼の住んでいるこの部屋はいつ来ても綺麗で自分の部屋のごちゃっと感が恥ずかしくなる。
昨日来るときに買っておいた牛乳、たまごを冷蔵庫から取り出しテーブルに置いていた食パンを用意する。朝食の準備開始。
食パンを卵液に浸ししばらく放置して、何か他に作れそうなものはないかと再度冷蔵庫の中を見た。
しかし、日頃絶対料理なんかしないであろう、もみじくんのお家の冷蔵庫は空っぽ。
「サラダくらいほしいよね」
ぽつりと呟き、食パンを浸している間にコンビニにでも行こうかと思えば、突然ふわりと温かいぬくもりに包まれた。
「おはよう、あんず」
「もみじくん、おはよう」
「どこ行くの?」
「コンビニにサラダを買いに行こうかと」
後ろから寝起きのもみじくんに抱きつかれ身動きを封じられる。
「いいよ、行かないで」
「でも、フレンチトーストしかないよ」
「いいよ、フレンチトーストいっぱい作ってくれたら」
そういうことで、いいのだろうか。と疑問ではあるが彼がいいなら、まあいいことにしよう。
「じゃ、すぐに焼くので離していただいてもよろしいですか?」
「無理です」
「……え、」
私の肩に腕を預け、するりと目の前に自分のスマホを見せてきたもみじくん。
そこに表示されていたのは起きて朝一、もみじくんに送ったメッセージ。
「だってあんずが悪いです。朝からこんなことされたら抱きしめたくもなります」