溺愛彼氏
「ずっとふたりで」
普段は着慣れない黒のワンピースに身を包み、これまた普段は見慣れない礼服に身を包んだもみじくんと一緒にイタリアンのお店に来た。
綺麗な夜景が見えるちょっと贅沢な今日の食事。
白ワインの入ったグラスを持ち上げ、なんだかちょっぴり照れ臭くてもみじくんの瞳を見つめて笑ってしまう。
「なんか、恥ずかしいです」
「なんで、今日のあんずはいつも以上に素敵だよ」
もみじくんが恥ずかしげもなく、そんな言葉を溢すからカァッと顔に熱が集まって仕方がない。
「可愛い」
赤くなる私を見て甘い声音が私を褒めるから、本当に溶けそうになる。
「あんず、僕と結婚してくれてありがとう」
「もみじくん、こんな私と結婚してくれてありがとう」
「好きになってくれてありがとう」
「愛してくれてありがとう」
「「じゃあ、結婚記念日に、乾杯」」
白ワインの入ったグラスとグラスを静かに合わせた。今日はもみじくんと私が結婚して1年の記念日。
美味しいコース料理を堪能し、お酒を飲んでしまったので車ではなく電車で最寄りの駅まで向かった。
「料理、美味しかったです」
「また、来年も、再来年も、記念日はお祝いしよう」
もみじくんのその言葉にこくり、こくりと全力で頷く。
「もみじくん、」
「なんですか?」
「手、繋いでもいいですか?」
「喜んで」
家までの道のりを暖かいもみじくんの指に自分の指を絡めて帰る。ただそれだけなのに、すごく幸せを感じるのは、もみじくんが隣にいてくれるから。
「幸せです」
「僕もです」
「おばあちゃんになっても、こうして手を繋いで歩きたいです」
「喜んで。何度でも喧嘩して、何度でも仲直りして。いっぱいあんずのこと甘やかさせて」
「なんですか、それ」
「ダメですか?」
「喜んで」
するりと、絡めた指を引かれてもみじくんの腕に捕まった。ぎゅっと抱きしめられた腕の中、耳元に甘い甘い囁きが落とされた。
「これからもずっと、僕に愛されてて。何があっても離してあげない。永遠に、」