センセイが好き―恋人は中学教師―
あたしは、冬馬の手をギュッと握った。
「…さわちゃん…?」
「…」
まだ
言えない…。
しばらくして
冬馬は帰っていった。
帰り際
冬馬は携帯の番号を書いたメモを渡してくれた。
「泣きたくなったら、連絡して来て。
…てか、まぁ…いつでも連絡してこいよ?」
「……うん!」
大好き…
なのに…
ごめんね…冬馬…。
部屋に戻ると
窓ガラスを叩く音がした。
「……郁人…?」
「…よっ…」
郁人は、鍵の掛かっていない窓を開けて入って来た。
「…どしたの…?」
あたしは、気まずい気持ちで郁人を見た。
「…さっきの…男…」
窓の外を眺めて言う郁人。
冬馬といるとこ…見られてたんだ…。
「あいつが…前言ってた、好きな奴だったんだ」
「…」
あたしは、小さく頷く。
「何で……?」
「え?」
「あいつ…教師だろ?!
麻人と蒼介の担任だろ?
あいつと一緒になっても…辛いコトばっかじゃねーのか?」
「…だけど…あたし…!」
「……渡さない」
今まで聞いたことのない
恐ろしい声だった。
「あいつに、紗羽子は渡さない」
次の瞬間には
郁人の唇が、あたしの唇に触れていた。