センセイが好き―恋人は中学教師―
別れ
桜は、市内の病院にいた。
真っ白な個室の中で
彼女は沢山の管に繋がれて
機械によって生かされていた。
「桜…」
俺が桜の名を呼ぶと、彼女はうっすらと目を開けて
にこりと微笑んだ。
「とう……ま…?」
「…そうだよ、桜」
「…冬、馬…」
桜は、情けなさそうに笑うと
よろよろと起き上がった。
「無理すんな、桜」
「だいじょ…ぶ…。…平気」
俺は桜が倒れないよう、彼女の体を支えた。
「黙ってて…ごめん、ね。
でも…いつか、は…言わなきゃいけないって……思って」
桜が時々言葉を詰まらせながら話す中
俺は上手く声を出せず、ただ頷くだけだった。
「あたし…ね、15歳まで生きられ、ないって、言われてたの…。
…でも、ね、あたし…生きてるよ。
来月…で、17歳に、なるんだよ?
だから……」
ぽたぽたと
桜の涙が、彼女の手を握る俺の左手を濡らした。
「死にたくない…死にたくないよぉ……!」
初めて聞いた、彼女の本音。
「生きて、いたい……冬馬と、ふたりで」
「っ!!」
俺は、そっと彼女の唇を塞いだ。
もう…
哀しい言葉を
彼女の口から聞きたくない。