センセイが好き―恋人は中学教師―
その日から毎日
俺は桜の元へ通い続けた。
桜は、日に日に痩せていった。
そして、ある日
落ち着きつつあった彼女の容態が、急変した。
もう、言葉を紡ぐことさえ、彼女には難しくなっていた。
管だらけの、痛々しい彼女の姿に
留めどなく涙が溢れた。
「…冬、馬……とうま」
桜の細い腕が
俺を探して、宙をさまよった。
「ここにいるぞ…桜」
「…冬馬…ごめんね……。
あたし……」
「…謝るな、桜は…何も悪くない」
「……冬馬…ありがと、あたしのこと…すき、に、なって…くれて」
「うん…」
「あたし……幸せ、だった」
「うん…!」
「冬馬…あたしが、死んでも……幸せに、なるんだよ?
…悔しい、けど…あたしよりも……好きになれる、子、見付けて…幸せに…なって……」
「…っ…」
俺の手を握る、桜の力が
弱くなった。
「冬馬の赤ちゃん…ほしかったなぁ」
その言葉を最後に
桜は二度と目を開けることはなかった。
「っ…ごめん、桜…!
気付いて、やれなくて…!!
ずっと…一緒にいるって……約束したのに…!!
ごめん、桜、…桜…!!」
俺は、二度と戻らない愛しい人の名を
何度も、何度も呼び続けた。
「桜…愛してる…、愛してる……!!」