わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
日常
プロローグ
「はるー、どこー?」
少女は広い庭の木々が茂った一画を歩いていた。
チリンと鈴の音がして足元に太ったブチ猫が、どこかから急に現れた。
「あ、ボス。ねえ、榛瑠知らない? 嶋さんが呼んでるんだけど」
猫はニャアと短くなくとそのまま行ってしまった。
「もう」
言いながら見渡してみたとき、木の陰から靴がチラッと見えているのに気づき近寄ってみる。
「ああ、いたいた」
あたたかな木漏れ日の下、芝生の上に少年が仰向きで寝ていた。周りには数字が書き連ねてある紙が何枚も散らばっている。
「数式解いてて途中で寝ちゃった?」
少女は呟くと、彼の横にちょこんと座った。
「榛瑠、嶋さんが探してるよ」
起こすにしては小さな声で少年に声をかける。少年はピクリともしなかった。
少女はちょっと首を傾げてそれから小さくクスクス笑った。
「カーディガンが猫の毛だらけだよ」紺色の服に猫の毛がついているのを見て独り言を言う。「髪にも葉っぱいっぱいだし」
金色の髪についた赤茶色の落ち葉を取ろうと手を伸ばした時、風が吹いて散らばっている紙と落ち葉がカサカサ音を立てた。
「風邪ひいちゃうよ」一花は今度は声を大きくして呼びかけた。「もう起きて。ねえ、榛瑠」
そして、少年はおもむろに片腕を伸ばした。
少女は広い庭の木々が茂った一画を歩いていた。
チリンと鈴の音がして足元に太ったブチ猫が、どこかから急に現れた。
「あ、ボス。ねえ、榛瑠知らない? 嶋さんが呼んでるんだけど」
猫はニャアと短くなくとそのまま行ってしまった。
「もう」
言いながら見渡してみたとき、木の陰から靴がチラッと見えているのに気づき近寄ってみる。
「ああ、いたいた」
あたたかな木漏れ日の下、芝生の上に少年が仰向きで寝ていた。周りには数字が書き連ねてある紙が何枚も散らばっている。
「数式解いてて途中で寝ちゃった?」
少女は呟くと、彼の横にちょこんと座った。
「榛瑠、嶋さんが探してるよ」
起こすにしては小さな声で少年に声をかける。少年はピクリともしなかった。
少女はちょっと首を傾げてそれから小さくクスクス笑った。
「カーディガンが猫の毛だらけだよ」紺色の服に猫の毛がついているのを見て独り言を言う。「髪にも葉っぱいっぱいだし」
金色の髪についた赤茶色の落ち葉を取ろうと手を伸ばした時、風が吹いて散らばっている紙と落ち葉がカサカサ音を立てた。
「風邪ひいちゃうよ」一花は今度は声を大きくして呼びかけた。「もう起きて。ねえ、榛瑠」
そして、少年はおもむろに片腕を伸ばした。
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