わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
なんの権利で、こんな時間にいきなり会いに行こうとしているの?

なんの立場で心配なんて言ってるの?

一花は向きを変えた。

帰ろう。戻ろう。何やってるのよ、私。

一花はフラフラと横断歩道に戻る。その時急に、視界に車の姿が入った。

え?

足が止まる。間に合わない。

目を瞑ったその時、後ろから思いっきり引っ張られた。そのまま後方に転ぶ。目の前を車が行き過ぎた。

「大丈夫か⁈」

え?

一花は自分の状況がよくわからなかった。でも、どこも痛くない。

「なにも痛くない……」

目の前に榛瑠がいた。一花は横断歩道すぐの歩道のところで座り込んでいたのだった。すぐ横で榛瑠が膝をついている。

助けてくれたんだ……。

榛瑠は一花に怪我がないのを確認すると、ホッとした顔をした。しかし、すぐに荒い声をだした。

「何をやっているんだ、あんたは。死ぬところだぞ!」

「ごめんなさい」

一花は弱々しく謝る。本当に、何やってるんだろう。なんでこう、いつも迷惑かけてばかり……。

「立てますか?」

幾分落ち着いた声で聞きながら、榛瑠が立ち上がりつつ一花に手を差し出す。

だが、一花は座ったままその手を取らなかった。

「……ごめんなさい」
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