わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
一花はテーブルのカップを両手で包みながら下を向く。なんだか、温まって落ち着くと、自分のしたことがわからないというか、落ち込むしかないというか。

あー、と言いながら、一花はテーブルに突っ伏した。

「別に怒ってるわけじゃ無いですからね?」

「うん、わかってるけど。あなたには手間をかけるし、須賀くんにも悪いことしちゃったし」

「須賀?」

「うん、ご飯食べてたの。最後、わけわかんなかったろうなあ、悪いことしたなあ」

一花は半分、独り言のようにつぶやいた。

「……へえ。まあ、いいですけど」

そう言いながら榛瑠は一花の隣に座った。

「ずっと思っているんですが、あなたと僕って前もこんな感じだったんですか?」

「え?」

一花は顔をあげて榛瑠を見た。

「なんていうか今の僕の感覚だと、正直、恋人同士ってもっと非日常的というか、女の人は甘さを求めるものでは?今のこの会話といい、なんか違いません?あなたも思ったことをそのまま口にしてるというか。それとも以前は違った?」

一花は言われた言葉をちょっと考えて、それから赤くなった。

「ずっとこんな風です。そうだよね、オープン過ぎだよね、私。ごめんなさい。小さい頃から知ってるから、つい。でも、そうだよねえ、あなたはきっと、私以外の女性と付き合った時はこんなんじゃなかったろうし、違和感あるよね」

< 118 / 172 >

この作品をシェア

pagetop