わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「謝まらないで。気にしているわけではなくて、聞いただけ。仲はよかったんだろうなとは思います」

「家族みたいなものだったから……」一花は両手で顔を覆った。なんだかすごく恥ずかしい。今の彼からすると、すっごく馴れ馴れしく感じるよね?「あー、もう、本当にごめんなさい。以前と違うってわかってるのに……。これからもっと気をつけます」

「だから、謝るなって言ってるよね?」

一花は榛瑠の形のいい眉尻が僅かに上がった気がした。と、その顔が近づいてきたと思ったら唇に柔らかい温かさを感じた。

え?

優しいキスだった。でも、すぐに離れはしなかった。そっと、感触を探るようなそんな……。

一花は自分の心臓が高鳴るのを感じた。

好きな人とのキスだから。ドキドキする。

榛瑠が離れた。一花はゆっくり目を開けた。彼の手がそっと、頰に置かれる。

「ぼうっとしてるね。最後にキスしたのはいつ?」

榛瑠がクスっと笑いながら言う。一花は急に恥ずかしくなって慌てて言った。

「え、あ、いや、え、そんな、久しぶりってわけじゃないし!」

って、ちょっと、私、何言ってるの!

「……へえ、そうなんだ。僕は覚えがないですけどね。じゃあ、まあ、遠慮することもないよね」

そう言ったと思ったら、一花は再びキスされた。

< 119 / 172 >

この作品をシェア

pagetop