わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
今度はずっと強引だった。一花の戸惑いは無視された。離れようとする意思も添えられた手が却下する。

なに?なんで?

一花は自由になった時、自分の唇を覆いながらその問いを口にした。

「な、なんで?」

「別に。ただ、あなたがどんなキスするか知りたかったので」

榛瑠は悪びれずに言った。

一花は榛瑠を思わず見つめてしまった。

ちょっと待って。私を振ったのあなたでしょ?一体なに?

もう絶対、からかってるとしか思えないんですけど!

一花は勢いよく椅子から立ち上がった。

「帰る!」

「懸命ですね。送りますよ、駅まで。その後は迎えにでも来てもらってください」

立ち上がりながら榛瑠は事務的に言った。

言われなくたって!と一花は思ったが口にはしなかった。

本当に、どうせ忘れるならこういう俺様な性格も忘れちゃえばよかったのに!






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