わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
そんな二人に一花が声をかけた。

「ねえ、ノコさん達も一緒にいただきませんか?」

「あー嬉しい。でも、まだお料理あるし、後でもいい?」

じゃあ、とっときますね、と一花が笑顔で言う。松岡がそんなに悪いワインではないから、悪酔いはしないですよ、と言う。

その値段で悪かったら困るだろうが、と須賀は思う。なんかムカつくな。

「そんな顔しないの。お客様の前で」

「……すみません」

「わかる気もちょっとするけど」

そう言ってノコは笑った。

「なんなんでしょうね、あの人たち」

「何って、お金持ちよ」

「いや、そりゃ知ってるけど」

ノコはチーズを切り出しながら話す。

「うーん、あの中で一番普通のOLは一花ちゃんだけど」

「お嬢じゃん」

「そういうこと。吹子さんは会社役員だしね。直接はお兄様が跡取りらしいけど」

「うん」

「あと、松岡さんは知ってる?」

「知ってます。雑誌で見たことあるので」

「かっこいいし、成功してるもんねえ。高校生の時からイケメンだったわよ。彼のうちもお兄さんが継ぐらしくて、今の事業は自分で始めたらしいわね」

「もう一人は?」

須賀は賑やかに話す男を見た。なんだか少し、違う雰囲気なんだよな。人好きする感じはするけど、悪く言えば落ち着きがないというか。
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