わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「随分と簡単に断言するのね?」

「言い切るよ。だって他に代わりはいないんだから」

「でも、四条さん全部忘れたままなんですよね?」

須賀は思わず口を出した。

「そうだね。でも、問題ないよ。大事なことを忘れたのなら、また気づけばいいだけだから」

そんな事なのか?

不服そうな顔をする須賀に松岡が重ねて言った。

「榛瑠から見返りを得ようとしない女ってそうそういないんだよ。男でもだけど」

「……」

「でもねえ」言葉を継いだのは吹子だった。「それって、女側から見たらどうなの?……辛いばっかりじゃない、アレが相手じゃ」

「んー、一花ちゃん榛瑠に鍛えられてるから大丈夫じゃないの?許してもらおう?」

松岡が笑って言う。

「彼女、総領娘だからな、俺らと違って。覚悟が違うって」

もう一人も笑いながら言った。

「あーもう本当に!男って隙を見せるとすぐそうやって甘えてくる!最悪!」

……美人が芝居がかった事言うと迫力だなあ。

そんなことを思う須賀をノコが手招きした。やばっ、仕事中だった。

「うわ、吹子サン怖いなあ」

松岡があいかわらず笑いながら言うのに被せるように言った将来政治家の奴の声は、結構マジだった。

「大丈夫だって。吹子に甘えようなんて奴いないって。怖えーもん」

吹子がきっと睨んだ。うん、怖い。
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