わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
解散の時刻に合わせて須賀もバイトを上がった。予定より遅くなったが、もちろん時給はでるし、色々食べさせてもらったり、いいことだらけだったな、と帰り支度しながら思っていた。

まあ、一花さんとあんまり話せなかったとか、それより何よりあの金髪がなんかムカついたけど、しゃあない。

三人の客もコートを着たりしながら話している。吹子には松岡が後ろから着せている。

二人ともその仕草が自然で真似できんなと思う。

「だけど、彼も丸くなった方よね。許してあげるか」

吹子が言っている。四条のことだろう。

「元からああですよ、滅多に怒ったりしてなかったし」

「そうだけどさあ」松岡の言葉に言い返したのは吹子でなくショータだった。「あいつ高校の時はさ、たまにだけど刺しそうな目してたじゃん」

「お前だからだろ」

「確かに、バカ言って殺されるっとか思ったことあったけど。じゃなくてさ」

「……あったわね」

「あったけど」

「それ考えりゃあ、マシになったって」

「……まあ、な」

三人は改めて店の者と挨拶を交わすと出て行く。

「じゃあ、俺も帰ります。お疲れ様でした」

「お疲れ様。気をつけて帰ってね」

ノコの言葉に笑顔を返して店を出ると、三人とも店のすぐそばにまだいた。松岡が電話をかけているようだった。

< 134 / 172 >

この作品をシェア

pagetop