わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「でも全く彼、って記憶をなくす前の僕のことですが、彼があなたに贈り物をしないつもりだったわけじゃないみたいですよ」
「え?今持ってるものがそれ?」
「……いえ、違います」
彼の顔から笑みが消えていた。一瞬、明らかに失敗したというような苦々しい顔をした。
そんな見たことのない表情が一花の胸を泡立たせた。
「なに?」一花は足を止めて榛瑠を見上げた。「それ、なんだったの?」
榛瑠は一花を見つめると感情のない声で言った。
「……指輪です。プラチナでできたペアリングです」
ペアっていうことは、榛瑠は自分の分も用意したんだ。だとしたらきっとシンプルなデザインの……。待って、それってもしかして……。
一花の脳裏に銀色の二つの指輪が浮かんだ。
「……それ、家にある?」
榛瑠は小さくため息をつくと言った。
「いいえ、今の僕には必要がないので、もう家にはありません」
一花は目の前の男をマジマジと見た。それから背を向けると足早に歩き出した。
「一花さん!」
後ろから榛瑠が呼ぶ声が聞こえた。だが、一花は無視した。
ペアの指輪。それってきっと、結婚指輪だったんじゃないの?少なくとも、その約束の意味をこめたものじゃないの?
泣きそうで唇を噛んだ。
「え?今持ってるものがそれ?」
「……いえ、違います」
彼の顔から笑みが消えていた。一瞬、明らかに失敗したというような苦々しい顔をした。
そんな見たことのない表情が一花の胸を泡立たせた。
「なに?」一花は足を止めて榛瑠を見上げた。「それ、なんだったの?」
榛瑠は一花を見つめると感情のない声で言った。
「……指輪です。プラチナでできたペアリングです」
ペアっていうことは、榛瑠は自分の分も用意したんだ。だとしたらきっとシンプルなデザインの……。待って、それってもしかして……。
一花の脳裏に銀色の二つの指輪が浮かんだ。
「……それ、家にある?」
榛瑠は小さくため息をつくと言った。
「いいえ、今の僕には必要がないので、もう家にはありません」
一花は目の前の男をマジマジと見た。それから背を向けると足早に歩き出した。
「一花さん!」
後ろから榛瑠が呼ぶ声が聞こえた。だが、一花は無視した。
ペアの指輪。それってきっと、結婚指輪だったんじゃないの?少なくとも、その約束の意味をこめたものじゃないの?
泣きそうで唇を噛んだ。