わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「持ってくる、待ってて」

冷蔵庫から水のボトルを持って寝室に戻ると、まだ榛瑠は座ったままだった。水を受け取ると、礼の言葉とともに言う。

「ありがとうございます。ところで、何であなた来たの?」

「え?だから、風邪だって聞いたから……」

「そうじゃなくて、怒ってたんじゃないんですか?」

一花は年末のことを思い出す。確かに、腹が立った瞬間もあったっけど、でもあの時はむしろ……。

「ごめんなさい」

一花は立ったまま頭を下げた。

「何のこと?」

「あの時、ひどい態度をとって。つまらない意地をはって傷つけたわ。そんなことする意味なんてないのに。むしろ、あなたが怒ってないかなって思ってたの……」

「怒りませんよ、私はそんなに感情的な人間ではありません。あなたは素直に自分の感情を表しただけだし、それは理解できる範囲です」

……やっぱり、微妙に怒ってるじゃない、その言い回し。でも、しょうがない。

「ごめんなさい」

「うん、まあいいけど、僕は謝らないですけど。とりあえず寝ますね」

そう言ってベットに横になる。額に左腕をのせていてだるそうだった。

「何か欲しいものほかにある?頭冷やす?」

「いらない。ああ、でも、欲しいものはあるなあ」

「なに?」
< 147 / 172 >

この作品をシェア

pagetop