わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
言いながら、一花は横になっている榛瑠に上布団をかけようとした。と、不意に腕を掴まれて気づいたら横にされてベットの上で抱きつかれていた。

ちょうど、一花の顔の下、胸のあたりに頭をのせている。

「え?」

「……落ち着く」

榛瑠がぼそっと呟く。

ああもう、まったく。この人は……。手も体も熱いし。熱が出ると女の子にひっつきたがるの、こうなると、もう本能なのかしら。

しょうがないなあ……。

一花は榛瑠の金色の髪を撫でた。この髪、大好きだなあって思う。

「……怒らないんだ?」

榛瑠が胸に顔を埋めたまま言う。

「いつものことだもの。……あなた覚えているのかわかんないけど、熱出すと昔からこんなんだったもの。……そうよ、だいたい、子供の時から結構丈夫そうなのに、熱だけは出すのよ。でも、平気なふりするからいちいち心配で」

そう、ずっとそう。

「だから今回も心配で来たのよ。いつもそうしてきたのに、今回は違う、なんて変でしょ?」

元カノが元カレの元に病気だからって来たら、迷惑かもしれない。でも、それ以前の話よ。ずっとこうだったのよ。

「だから来たのよ」

迷惑でも知るものか。心配するのが普通なんだから。例え二人の関係が元に戻らなくても、例え榛瑠がなにも覚えてなくても、例え迷惑に思っても。

私は心配する。今までも、これからも。
< 148 / 172 >

この作品をシェア

pagetop