わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「私は勝手に心配するし、押しかけるし。だからあなたも」

一花は榛瑠の頭を軽く指でトントン、とした。

「なに?」

「今のあなたを心配する人がいるってこと覚えておいてね」そうじゃないと、どこまでも無茶しそうだし。「いい?私だけじゃないのよ。屋敷の人もよ。そうじゃないと、さすがにお粥作って持ってきてなんて、私だって頼めないんだから」

榛瑠は小さく笑ったようだった。それから顔をあげると、一花に笑いかけた。優しい顔で。それからそっとキスをする。

「……ああ、しまったな。うつしちゃいけないのに」

唇を離すと榛瑠は言った。

「平気、丈夫だから」

目をつぶったまま一花は言った。榛瑠はまた頭をのせる。きっと、すごくドキドキいってるのがバレちゃってる。

「あ、そうだ。感染るって言えば、美園さんも今日出社してなかったよ?どうして?一緒だったんでしょ?」

「ああ、二日酔いなんじゃないですか?」

「はい?」

「飛行機の隣の座席で、ずっと咳しながら消毒とかいって酒ばっかり頼んでたから。日本についてタクシーに放り込んだんですけど、いい迷惑」

あ、そうなの。笑うべきなのかなんなのか。

「美園の心配もしたの?」

「さすがにそんなに優しくできないなあ。二人とももう帰ってこないのかもと思ったから……」
< 149 / 172 >

この作品をシェア

pagetop