わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「本当にすぐ謝りますね。僕はあなたの弱みでも握っていたんですか?」

「まあ、握りまくっていたといえばそうだけど……。たくさん面倒みてもらってたから、だから、今となっては申し訳ない気持ちがあって、つい……」

「多分、以前の僕はそんなこと気にしてなかったんじゃないかな。少なくとも今の僕はそうです。……イライラするのはね、思い通りにならないからです、一般論として。じゃあ、何をどうしたいのか、というのがはっきりしない。で、自分にイライラする羽目になる」

「……考えすぎよ」

「まあね。だから旅に出てみたり、筋トレに励んでみたりね、動くわけですよ」

そっか。それにしても、こんなに話してていいのかしら。体調は大丈夫?

「ねえ、あの、からだ……」

「無駄に話してますね、もう終わります」榛瑠は一花の言葉を遮って言う。「アメリカに行って、友人だと言う人達に会って、楽しかったんですよ。だから余計思うんです、なんで日本にいるのかって。そんなことを機上で考えていたわけです」

「……」

それは私のせいだった。胸が詰まる。私は、以前の彼が私のために割いた時間や気持ちに、きちんと向き合っていただろうか。

「ごめ……」

一花は謝る言葉を途中で止める。

謝ったらいけないんだろうな、でも、何て言えばいいのだろう。彼はなんて言って欲しくてこの事を話しているのだろう。
< 154 / 172 >

この作品をシェア

pagetop