わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「謝らないでくださいね。僕は自分の奇行の意味に気づいた時、嫌な気はしなかったんですから」

「うん。……でも、え?奇行?」

「奇行でしょう?だって意味がわからない。日本にいること、必要以上に筋トレに熱心なこと、甘いものが好きじゃないのにお菓子が作れること、イライラすること。でもね、結局、あなたのためだったんですよ」

「うん……」

一花は声が沈む。

「そのことが腑に落ちた時、温かい気持ちになりました。……多分、あの感情に言葉をつけると、嬉しいってことなんだと思う。そして愛しいと思った」

遠くから届く榛瑠の声は囁くようだったが、とても明るかった。小さな子供が宝物を見つけた時のように、そっと、でも、楽しそうに。

「僕の理解できない部分はあなたのためだった」

一花はなぜか一瞬、風が吹いたような気がした。涙がにじむ。

「僕の一部は、一花、あなたでできている。……僕は失くしたものを見つけました」

「榛瑠……」

一花はそれ以上言うことができなかった。涙が溢れてきて、言葉にできない。

榛瑠の中に私はいた。そして、私もまた、あなたの言葉で私を見つける。あなたが見ていた、そこにいた、幸せな私。

私を見つけてくれてありがとう。

「どうか、泣かないで。あのね、熱が下がったら会いに行ってもいいですか?泣かしてばかりだけど、……僕はまだ、間に合いますか?」
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