わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「悲しそうな顔しないで。ごめんね」

昨日から、何度も謝られた。榛瑠のせいではないのに。一花は腕を伸ばして彼のクビにしがみついた。榛瑠が抱きとめてくれる。

「ごめんって言わないといけないの、ほんとは私のほう。ごめんなさい」

「なんで?」

「私、何にもできなかったから。何にもしてあげられなかった。……怖くて、辛くて、そばにいれなかった。ごめんなさい」

「なんで一花が謝るの?あの時は私が拒否したのに」

「そうだけど、……それでももっと、寄り添うこともできたかもしれないのに」

美園さんはそれができたのに。榛瑠は小さく笑うと腕を解いて私を見た。

「あのさ、一花」

「はい」

「いろいろ言いたいけど長くなるので一言だけ言っておくけど」

「はい」

「あの時、そういう貴方らしいところも全部好きだなって思ったから。もちろん今も。愛してるってそういう意味で言ってるんだけど。人の話、聞こうか?」

一花は嬉しさと恥ずかしくてとっさに言葉が出てこなかった。で、つい可愛くないことを言ってしまう。

「……そんなの!あなたに人の話聞けなんて言われたくないし!」

榛瑠は声を出して笑うと、また私の頬を包んでキスする。目をキュッとつぶっているとそのまま頬やらおでこやらキスする。

「ちょっと、もうやだ、キスしすぎ!禁止します!」

「あ、それ無理です」言いながらも、全然離そうとしてくれない。

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