わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「新しく一花が気に入ったものを贈るから。一緒に選びに行ってもいいし、ね?」

こんな風に言ってくれてるのに何をこだわるのだろうと一花は自分で思う。第一、贈り物は贈り主が選ぶものなのに。でも。

「わたしね、わたし……」

「うん」

「指輪のことを聞いた時、すごく嬉しくて、それからすごく悲しかったの。それから……」

一花は胸元にあるネックレスをそっと触った。

「それから、これつけてくれて、もう、なんか、いっぱいになっちゃって……」

思い出しても涙が滲んで喉がつまったようになる。

「だから、なんか、うまく言えないけど、特別な感じで、だから……」

全然、うまく言えない。悲しくて愛しくて、そんな……。

榛瑠はうつむく一花の額にそっとキスすると、優しく抱き寄せた。

「傷つけてごめん。でも俺としてはそのネックレスも取り返したいぐらいなんだけど」

「え、嫌」

一花はネックレスをぎゅっと握った。

「わかってる。さすがに言わない。でも、少しでも辛くて悲しいことを思い出させるようなものを身につけていて欲しくないんだよ。だからアレはあげれない。ごめん」

そうか。でもね、でも、そんな悲しい記憶も私には大切なあなたとの時間なの。

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