わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「で、つまり社長はかすり傷で、ほかの社員ともう帰国手続きに入ってるらしい」

鬼塚は戻ると、そう一花に話した。休憩室は人気がなくなりぽっかりとした明るい空間に戻っている。

「……よかった」

一花がボソッと言って弱々しい笑顔を見せる。

「結局、入院したのは四条だけらしいな。あいつともう一人、面倒見るために残す社員は後からの帰国だそうだ」

「……うん」

「でも、念のための様子見で命に別状はないらしいから。まあ、社長のことをかばっての怪我らしいから怒ってやるなよ?」

「怒んないよ」

「で、お前だが。本当は俺が今から屋敷まで送ってやれれば良いんだがこの後商談でさ。一人で帰れるな?」

鬼塚は言いながら、子供じゃあるまいし、と思った。でも、一花相手だとどうにも心配になる。

「あ、そうだ、仕事!鬼塚さんすみません!わたしは平気なので行ってください!」

いきなりはっきりとした面持ちで一花が言う。

「ああ」

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