わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「あーもう!」

だいたい、榛瑠のマンションに来た時から最悪だった。

そりゃね、約束してなかったわよ?いきなり来ちゃったわよ?でもさ、日曜日くらい良くない?

正直、驚いてむしろ喜んでくれたりして、とか思ってたわよ。ええ。思っても良くない?

なのに、ヤツときたら……。

一花は座りなおすと、枕を手にとっておもいっきり打ちつけた。

顔を見るなりため息をついて、それでも部屋にあげてはくれたけど、忙しいからって放置。

まあ、しょうがないかなあって、文句も言わずに大人しくしてたのに!挙句にこの扱い!酷すぎる!

それでなくても、会社ではなかなか会えなくなっているのに。

付き合っていることを隠しているから会社ではおおっぴらに話したりはできないにしろ、前は同じ部署だったし顔は見れたのに、今は榛瑠が部署移動してその機会も減った。

それに、来週から確か海外出張のはず。

……。なによ。相手してくれたっていいじゃない。

一花は掛け布団を頭まで被ると中で丸くなった。

こういう時、黒い影みたいなものが胸をよぎっていく。

本当に、彼は私のこと好きなのだろうか?ただ単に惰性で、面倒をみないとくらい思っているだけで、本当は好きとは違うのではないだろうか。

時間は積み重なると、はじめの思いを変えていってしまう。

私たちは途切れているにせよ一緒に重ねた時間は長くて、そのことが自信にも不安にもなる。

本当は……?

……。でも、こんなの、本当はいじけてるだけです。ごめんなさい。甘えてるんです。はい。

だって、知ってるんだもん。彼が……。

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